小売の“頭脳”は、なぜ生まれたのか
前回のコラムでは、
“本部の判断”を、よりスピーディーかつ実務に近い形で整理していく仕組み
「RETAIL BRAIN(リテールブレイン)」についてご紹介しました。
そもそも、なぜBRINGがこうしたサービスをつくろうと思ったのか。
そのきっかけは、日々の支援の中にありました。
これまでBRINGでは、販促や売場演出などを中心に支援してきましたが、
最近は、販売計画や人材の支援まで入り込む場面が増えてきました。
その中で感じるようになったのが、
「店頭と向き合ってきたBRINGだからこそ、
販売戦略そのものを支援する価値があるのではないか」
ということでした。
今回は、そんな気づきから始まったRETAIL BRAINの開発背景についてお話します。
本部は、“より良い売場を生み出す仕事”に
時間を使えていない
販売戦略を支援しようと考えた時に、
前職の小売本部時代からずっと感じていた課題と結びつきました。
人手不足、物価上昇、気温変動、販促チャネルの多様化、
という環境が変化した中で、近年の小売業は、
前年実績や経験だけを頼りに判断する方針や業務の進め方では
対応しきれなくなってきています。
商品部や販促部では、元々様々なデータを見ながら
販売計画や販促計画を立てるのですが、
現代の顧客や競合に対応していくには、さらに多くのデータを見て
精度高く判断していく必要が出てきました。
ただ実際には、
必要なデータを十分に見切れておらず、
売上につなげきれていないケースも少なくありません。
一方で、膨大なデータを見ることができたとしても
今度は“判断するためのデータ整理”に多くの時間が使われてしまいます。
その結果、本来時間を使うべき
「何を、どう売るべきか」を考える仕事に、
十分な時間を割けなくなってしまっていたのです。
さらに、販売計画や販促計画は属人化しやすく、
担当者が変わることで、計画の精度や品質に差が出てしまうという課題もありました。
しかし、こうした本部業務の課題は、
多くの企業で今もなお改善しきれていないのが実情です。

「これ、仕組化で解決できるんじゃないか」
そんな課題感から考えたのが、
必要なデータがすぐに取り出せたり、施策考案のヒントをもらえる仕組みでした。
もし、膨大なデータ整理や分析をAIが支援できれば、
本部は“生み出す仕事”にもっと集中できる。
さらに、属人化しがちな判断も整理され、
販売計画や販促計画の精度を高めていけるのではないか。
そう考えるようになっていきました。
そこでまず、企画書を書き、将来構想まで含めた社内プレゼンを実施。
同時に、本当に実現可能なのか、小売特化型のAIサービスは存在するのか、
確かめるため、AI展示会にも足を運びました。
実際に調査を進めてみると、
その時点では“小売本部の人が利用すること”に特化したAIは、ほとんど見当たりませんでした。
「まだ、誰も本格的にはやっていない」
そう感じたことで、「BRINGがやらなきゃ」という想いはさらに強くなっていきます。
そしてそこから、RETAIL BRAINの開発が本格的に動き始めたのです。
「現場で使えるAI」にするまで
RETAIL BRAINの開発は、まず“仲間探し”から始まりました。
人脈をたどっていく中で出会ったのが、
大手小売企業の物流システム構築にも携わっていたエンジニアです。
自分たちがやりたいことを説明すると、
「それ、面白いですね。一緒にやりましょう」
そう言っていただき、RETAIL BRAINの開発は一気に動き始めました。
最初に取り組んだのは、比較的着手しやすかった需要予測です。
POSデータや家計調査データを活用し、「これから何が売れるのか」を予測する。
ただ、需要予測そのものは、すでに他社サービスで出回っていますし、
「どう売るか」を判断する材料としては不足しています。
必要とされているのは、“何が売れるか”ではなく、
その情報をもとに「どう売場をつくるか」を提案することです。
これを軸に、サービスの開発は進んでいきました。
実際に開発を進めていくと、そこには大きな壁がありました。
開発当初は、例えば、猛暑に対する施策を作ろうとして、AIにデータを入れると、
「エアコン」や「扇風機」に対するアイデアを提案してくることもありました。
それでは食品スーパーの現場では使えません。
さらに、アウトプットもテキストベースが中心で、
それをどう売場に落とし込めばいいのか、イメージしづらい状態でした。
そして、もっと難しかったのが、
“小売特有の感覚”をどうAIに落とし込むかでした。
同じ商品でも、
価格で動くのか。
季節感で動くのか。
地域性が強いのか。
競合の影響を受けやすいのか。
小売の現場には、数字だけでは説明できない判断が数多くあります。
だからこそRETAIL BRAINは、単なる需要予測AIではなく、
「小売の現場で、本当に使える形」
を目指して、何度も方向修正を繰り返していくことになったのです。

実際に動かして、初めて見えたこと
開発には、実際の小売企業にも協力いただきました。
実データをもとに動かしてみると、
「人では気づけない視点が出てくる」という反応がある一方で、
知りたいことや必要としている情報は、人によって大きく異なるということがわかりました。
だからこそ、一つの型に当てはめるのではなく、
もっと柔軟に、必要な情報へたどり着ける形が必要だと考えるようになりました。
そこでRETAIL BRAINでは、
“考えを広げる”使い方と、“計画へ落とし込む”使い方の、
2つのアプローチを用意しました。
例えば、季節商材や市場動向などについて、
チャット形式で気軽に相談しながら、アイデアや視点を広げていく。
そして、その内容を踏まえながら、実際の販売計画や販促計画へ整理していく。
単に答えを返すのではなく、
「考える」と「形にする」を行き来できるようにしたのです。
そうすることで、より多くの人が、より多くの場面で
RETAIL BRAINを活用しやすいものになっていきました。
また、企業ごとに、求めるものが全く違うという新たな課題も見えてきます。
同じ食品スーパーでも、
・販促の考え方
・商品構成
・組織体制
・基幹システム
すべてが異なる。
つまり、
“ひとつの正解を、そのまま全社に当てはめることはできない”
ということでした。
だからRETAIL BRAINは、“一緒につくる”
RETAIL BRAINには土台があります。
しかし、完成形を押し付けるサービスではありません。
各社の課題に合わせ、必要な形へカスタマイズしながら育てていく。
それが、このサービスの考え方です。
属人化を減らしたい。
販売計画の精度を上げたい。
本部と店舗の認識を揃えたい。
企業ごとに違う悩みに対して、一緒に設計していく。
RETAIL BRAINは、そんなサービスを目指しています。
ここからが本番
RETAIL BRAINが形になった時、正直、達成感よりも先に感じたのは、
「やっとスタートラインに立てた」
という感覚でした。
もちろん、ここまで形にできた手応えはあります。
ただ、自分の中では、まだ“完成した”とは思っていません。
RETAIL BRAINは、まだまだ進化の途中です。
それでも、「方向性は間違っていなかった」その手応えは、確かにあります。
実際、大手企業でも同様の動きが始まり、
小売業界全体が、“AI活用”へと大きく動き始めています。
その中でBRINGは、単なる効率化ではなく、
“より良い売場づくりにつながるAI”
として、RETAIL BRAINを育て続けています。
次回はいよいよ、
「RETAIL BRAINで、実際に何ができるのか」
についてご紹介します。
・販売計画
・販促立案
・数量計画
・本部と店舗の連携
実際の活用イメージも交えながら、
RETAIL BRAINの具体的な使い方をお届けします。
BRINGは、小売店の未来型経営を支えるパートナー

BRINGは、小売店サポートのプロ。
ストアコンディションアップは、単なる店舗改革ではありません。
“人の想い”と“データの力”を掛け合わせ、
地域の日常をより安心で、より心地よい時間に変えていく——。
小売店の変革を、現場とともに形にしていきます。
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ストアコンディションアップ事業部
Y.S
流通小売業界で20年以上にわたり、商品部・販促部・店舗運営部をはじめとする営業の中核部門を経験。
加工食品、菓子、酒、米、日配食品などの主力カテゴリを中心に、PB開発、仕入戦略、販促施策、カテゴリーマネジメントを推進。
さらに、物流再構築や人材事業の立ち上げ、業務請負スキームの構築にも従事し、売上・利益の改善と組織最適化に寄与。
BRING入社後はその知見を活かし、ストアコンディションアップ事業を立ち上げ、責任者として従事。
地域の食品スーパー・メーカーに対し、売場改善、販促設計、業務改善、人材活用、AI活用など多面的な課題に対し、
実行フェーズまで伴走する支援を実施。
特にBRINGでは、全社横断での実行設計と現場運用を通じ、
「仕組みづくりで成長を回し、現場で再現させる設計力」を武器に、再現性と実行力を両立した支援を展開しています。

