【対談コラム③】
売場にUFO襲来⁉「本気で遊ぶ」仕掛けのクオリティ
これまでの仕掛学対談では、
「情報を届ける」から「行動を生む」へ。
売場における新しいコミュニケーションの形について考えてきました。
▶初回の【対談コラム①】はコチラ
そして前回は、
「価格をあえて見せない」という逆転の発想から生まれた、
お客様自身の行動を引き出す売場の仕掛けについてご紹介しました。
▶前回の【対談コラム②】はコチラ
今回は、その先にある、
「人を巻き込み、ファンを生む仕掛け」についてご紹介します。
お客様に商品を知ってもらうだけではなく、
「誰かに話したくなる」体験をつくる。
そのためには、どのような工夫が必要なのか。
今回は、スーパーとメーカーが生み出した、
遊び心あふれるプロモーション事例から、その仕掛けを紐解いていきます。
スーパーの上空にUFO襲来?驚きの「号外チラシ」
宮城
松村先生、これ結構前の事例なんですが、
私が売場で見つけた時に思わずテンションが上がってしまって(笑)。
どうしても先生にお話したくて持ってきました。
関東を中心に展開されているスーパー「ベルク」さんと、
日清食品さんの「日清焼そばU.F.O.」のタイアッププロモーションなんですが、
これがもう、仕掛けのスケールがとんでもなくて(笑)。
松村教授
お、ベルクさんと日清食品さんですか!一体何を仕掛けたんですか?
宮城
ある日、ベルクさんの店頭で「号外チラシ」が配られたんです。
なんと、あの東京スポーツ(東スポ)さんと組んで作った
本格的な新聞記事風のチラシなんですが、一面の見出しが
『UFO本物 ベルク上空に一斉飛来』。
今朝売場に行ったらびっくり!
— ベルク(Belc)🅱️ (@belc_jp) July 16, 2021
UFOがベルクの店舗上空を飛んでいる!?😳
気になる方は店舗の号外新聞をチェックしてみてくださいね。
※数に限りがございます。あらかじめご了承くださいませ。 pic.twitter.com/i9aFQdVKed
松村教授
ベルク上空にUFOが飛来(大笑)。
さすが東スポさんとベルクさん、アプローチやタッグの組み方が最高ですね。
宮城
すごいですよね。
しかも中身もめちゃくちゃ凝っていて、UFO肯定派の社長と、
批判派の大学名誉教授が誌面で大論戦してたりするんです。
これ、単に「日清焼そばU.F.O.が安いよ」と伝える通常のチラシとはワケが違って、
各店舗で3万部も配布されてSNSでも大バズりしたんですよ。
なぜ、この「遊び心」にお客様は巻き込まれてしまうのか?
松村教授
これは仕掛学の核である「目的の二重性」が120%機能している素晴らしい例ですね。
【目的の二重性とは・・・?】
仕掛ける側の目的と、仕掛けられる側(仕掛けによって行動する側)の目的が異なること。
お店やメーカー側の目的は
「日清焼そばU.F.O.のキャンペーンを知ってほしい、お店に来てほしい」ということ。
でも、それをそのまま伝えても今のユーザーには響きません。
そこで『UFO襲来のスクープ』というエンタメを被せることで、
ユーザー側は「何これ!?結末はどうなるの?」
という純粋な好奇心(目的)で動き、結果的にお店に足を運んでしまう。
宮城
そうなんです。僕が一番秀逸だなと思ったのが、
ちゃんと『ストーリーの回収(オチ)』まで繋がっている点なんです。
ただ「UFOが襲ってきた!」と騒ぐだけじゃなくて、
実は「日清焼そばU.F.O.の共同レシピの紹介」や「売場レポート」といった
本来伝えたかったキャンペーン情報へ、新聞の文脈のまま綺麗に着地させている。
このコンテンツの厚みがあるからこそ、
お客様も冷めずに最後まで楽しんで参加できるんですよね。
食べる瞬間の「あたりまえ」すら仕掛けに変える
松村教授
日清焼そばU.F.O.といえば、実は「食べる瞬間」にも山ほど仕掛けを作っているんですよ。
宮城さん、これ見たことありますか?
温泉でライオンからお湯が出てるとテンション
— 日清焼そばU.F.O.公式 (@nissin_u_f_o) January 7, 2021
上がるので、U.F.O.にも搭載してみました。
年始の初湯切りにふさわしい、ゴージャスな気分が
味わえました。
RTが多ければ商品化!?#UFOゴージャス湯切り#おせちに飽きたらUFO pic.twitter.com/oqd6nvql96
宮城
うわ、何ですかこれ!
湯切り口の「穴」をお金持ちのお風呂にありそうなライオンの蛇口に見立ててますね!
U.F.O.を食べる時にゴージャスな気分になれそうですね(笑)。
ご自由にお使いください。#レンタル湯切り傘 pic.twitter.com/Iu5y6A8Ux5
— 日清焼そばU.F.O.公式 (@nissin_u_f_o) July 7, 2024
こっちは傘立てですか? 面白すぎる!
松村教授
そう、日清焼そばU.F.O.の公式SNSでは、
カップ焼きそばを食べる時に必ず行う「湯切り」の穴を、
色んなものに見立てて面白がる発信をずっと続けているんです。
湯切りをする時に穴から麺が「ちょびっと出てしまう」現象を
逆手に取っておみくじにしていたり、
シンクにお湯が流れる勢いをダム放流に見立てるために、
実在するダムが描かれていたり……。
宮城さんがおっしゃったように、
まさに「真剣にふざけている」からクオリティが高くてバズる。
ただ奇をてらっているのではなく、細部までこだわり抜いているからこそ、
人を惹きつける仕掛けになっているんです。
宮城
なるほどなぁ……。
これって「日清焼そばU.F.O.を買って」と直接売り込んでいるわけじゃないのに、
これを見たユーザーは
「面白いな、久々にU.F.O.食べたくなってきたな」
ってなっちゃいますね。
松村教授
そのとおりです。
「湯切り」というU.F.O.を食べる時、誰もが行う動作を
ただの作業で終わらせず、むしろ「楽しみ」や「愛着」に変えている。
定期的に商品を思い出してもらう(第一想起を高める)仕掛けになっているんです。
「誰も損をしない」から、ファンが生まれる
宮城
前回の価格隠しの時も先生とお話しましたが、
ベルクさんの号外チラシも、日清焼そばU.F.O.の湯切り口ネタも、
やっぱり「誰も不利益を被っていない(公平性)」のが共通していますよね。
嘘をついて騙しているわけじゃなくて、
誰もがクスッと笑えるエンタメになっているから、
Z世代をはじめとする若いお客様が喜んでSNSでシェアしてくれる。
松村教授
おっしゃるとおり、仕掛けが成功する大前提は
「関わった人みんながハッピーになること」です。
大企業がここまでカルチャーとして遊び心を持って仕掛けてくれると、
ブランドのファンにならざるを得ないですよね。
宮城
情報をただ並べるだけのプロモーションではもう効かないんだと、
改めて突きつけられた気がします。
こうした「人の心を動かす仕掛け」は、
これからの売場づくりやプロモーションにおいて、ますます重要になっていくと考えています。
僕たちBRINGも、お客様が思わず「誰かに話したくなる」ような
ストーリーと仕掛けを持ったプロモーションを、
どんどん企画していきたいです!
「どう伝えるか」ではなく、
「どうすれば人は動きたくなるのか」。
BRINGは、その視点を大切にしながら、
50年にわたり培ってきた販促知見と掛け合わせ、
お客様の行動を生み出す売場づくりをご支援しています。
50年の販促知見と「仕掛学」を融合させた独自のコンサルティングを提供。
・商圏特性に応じた行動デザインの設計
・52週MDに基づいた「今、動かしたくなる」仕掛けの提案
・SNSとの親和性が高い「映える・体験する」売場づくり
ただ並べるだけの売場から、体験が生まれる売場へ。
私たちと一緒に、新しい買い物のカタチを設計しませんか?
少しでも気になった方はコチラからお気軽にご相談ください!
■松村 真宏(大阪大学大学院経済学研究科 教授)
【経歴】
1975年大阪府東大阪市生まれ瓢箪山育ち。1998年大阪大学基礎工学部卒業。2003年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。2004年イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員、2012年〜2013年スタンフォード大学客員研究員。人工知能の研究室で博士号を取得した後、紆余曲折の末「仕掛学」を創始し、現在は仕掛学の研究・実装・普及に従事している。
【主な実績】
著書:『仕掛学』(東洋経済新報社、2016)、『実践仕掛学』(東洋経済新報社、2023)、『なぜ人は穴があると覗いてしまうのか』(幻冬舎、2025)、『Shikake: The Japanese Art of Shaping Behavior Through Design』(Liveright Pub Corp、2020)など
論文:Shikakeology: designing triggers for behavior change (AI & Soc 30,2015)、The dynamism of 2channel (AI & Soc 19, 2005)、PAI: Automatic indexing for extracting asserted keywords from a document (NGCO 21, 2003)など
受賞:ベストペーパー賞(日本マーケティング学会、2017)、大阪大学賞(大阪大学、2017)、第6回World OMOSIROI Award(2020)、感謝状(愛知県常滑警察署長、2022年)、高進度賞(公文教育研究会、昭和59年)など
【座右の銘】
世の中ね、仕掛けか死ねかなのよ(回文)(松村真宏)
Better late than never. (Geoffrey Chaucer)
Fail faster, succeed sooner. (David Kelley)
Stop and smell the roses. (The Old Testament)
You play with the cards you're dealt. (Snoopy)
■宮城亮平(株式会社BRING 執行役員)
2006年 新卒で株式会社BRINGへ入社。
「大手流通小売業の52週の売場演出」「店舗活性化」「メーカー各社の販売促進」に携わりながら、2018年12月に立ち上げた日本初のバーチャル接客サービス「バタラク」の事業を推進。
人材不足が問題化している世の中に対して、好循環をもたらす新しい接客手法などの開発を行う。2020年からはリアルとデジタルの融合や様々な新規のビジネス活動のデザイン開発を進行。
現在は「思わずやってしまう」というカラクリに再現性を持たせるため、
大阪大学の仕掛学をはじめとしたアカデミアと協業しながら、店頭での行動変容についての言語化を日々研究。
多様な角度から考察を重ね、店舗のコンディションをあげる次の一手をご提供することを通じて、世の中の悪循環を好循環に変えるべく活動中。
