【とことん調査隊①】
4社のスーパーアプリ比較から考える
アプリと販促が生み出す新しい買い物体験
スーパーマーケットでは便利なサービスが増え、機能が進化し続ける時代。
その一方で、本当にお客様に求められているものは何なのか。
新しいサービスや機能を増やすことだけが、これからの小売の進化なのでしょうか。
BRINGでは、
日々、小売業界の販促に携わる中で感じる疑問や、
ちょっと気になるサービス、業界の新しい動きなどを取り上げ、
とことん調べて、比べて、考えるコラムシリーズ、
「とことん調査隊」をスタートしました。
記念すべき第1回のテーマは、「スーパーマーケットのアプリ」です。
今回は、4社のアプリを調査し、その結果から見えてきたことを、
販促をメインに支援してきたBRINGならではの視点で考えていきます。
機能が多ければ便利? 使い比べて見えてきた意外な違い
各社とも、多くの便利な機能を備えている一方で、
実際に使ってみると、機能の充実度だけでなく、
使いやすさやお得さの感じ方にも違いが見えてきました。
■関東SM・A社のアプリ
【全体の機能の充実】
ポイントカードや決済を中心に、チラシ、レシピ、買い物メモ、購入履歴などの機能を搭載。
チラシやレシピから気になる商品を買い物メモに追加でき、フォルダーごとに整理することも可能です。
【全体の使いやすさ】
ホーム画面はポイントカードや決済を中心としたシンプルな構成。
普段使う機能がわかりやすく、詳しい情報は「お知らせ」から必要に応じて確認できます。
一方、クーポンやキャンペーンなどの情報は、ホーム画面とは別の場所から探す必要があります。
【お得な施策:チラシ】
内容:
今回の調査期間中、クーポンの付与は確認できませんでした。
一方、アプリ内のチラシのページでは「広告の品」「ボーナスポイント」「期間限定プライス」など、
お得な商品を種類ごとに確認できます。
使いやすさ:
チラシは登録店舗ごとに閲覧でき、キーワード検索やカテゴリによる絞り込みも可能です。
気になる商品を買い物メモに追加することもできます。
お得さの実感:
「当日限り」「売り切れご免」といった表記もあり、商品の価格だけでなく、
今買うメリットも伝わる工夫が見られました。
■関西SM・B社のアプリ
【全体の機能の充実】
クーポンやポイント、レシピ、買い物メモに加え、来店スタンプやスクラッチ、アンケートなどの機能を搭載。
レシピから食材を買い物メモに追加でき、買い忘れを防ぐリマインド機能も備えています。
【全体の使いやすさ】
クーポンやポイントなどの機能が揃う一方、便利なレシピや買い物メモが
「その他」にまとめられており、存在に気づきにくい印象でした。
【お得な施策:クーポン】
内容:
今回の調査期間中、クーポンの付与は確認できませんでしたが、
TOP画面の目立つ位置にクーポン一覧に遷移するボタンが配置されていました。
スクラッチなどを通じて、獲得できる仕組みもあります。
使いやすさ:
クーポンを利用する際は、会計時に対象のクーポンを一つずつ表示して提示する必要があります。
複数のクーポンを使う場合は、その分操作が必要です。
お得さの実感:
利用するクーポンを自分で選んで提示するため
値引きされる様子をその場で確認でき、お得さを実感しやすい仕組みです。
■広域展開SM・C社のアプリ
【全体の機能の充実】
クーポンやキャンペーン、ボーナスポイント商品に加え、電子レシート、
お買いものリスト、チラシ、レシピなど、日々の買い物に役立つ機能を搭載。
アプリを開くとスタンプが貯まり、数に応じたクーポンがもらえる仕組みもあります。
【全体の使いやすさ】
よく使う機能や情報がわかりやすく整理され、クーポンやお買い得情報にもアクセスしやすい構成です。
一方、レシピと買い物リストは連携しておらず、材料をリストに追加する際は手動で入力する必要があります。
【お得な施策:クーポン】
内容:
数は5種類程度で多くないですが、メーカー関係なくレトルトカレー全般やトマト全般など
1つのあたりの対象範囲が広いクーポンを配信しています。
使いやすさ:
事前にアプリで使いたいクーポンを選ぶ必要がありますが、会計時はクーポンコードの読み取りは不要です。
会員コードを一度読み取れば、対象商品をスキャンすると自動的に値引きが適用されます。
お得さの実感:
事前に選択することで、対象商品や値引き額を自然と確認できるため、
どの商品がお得になるのかを把握しやすい仕組みです。
■全国GMS・D社のアプリ
【全体の機能の充実】
クーポンやキャンペーン、スタンプカードに加え、買い物メモ、店内モード、
セルフスキャン、アプリ内決済など、買い物を幅広くサポートする機能を搭載しています。
【全体の使いやすさ】
機能や情報が豊富な反面、情報量が多く、便利な機能がどこにあるのか気づきにくい場面もありました。
【お得な施策:クーポン】</b
内容:
商品ごとに細かなクーポンが発行されており、その数は100種類以上あります。
使いやすさ:
ほとんどのクーポンが事前に選ぶ必要もなく、会計時に会員コードを読み取り
対象商品をスキャンすると自動で適用されます。
クーポンを選ぶ手間や適用漏れの心配が少ない仕組みです。
お得さの実感:
操作の手間がない一方、何がいくら値引きされたのかは
レジや購入履歴を意識して確認しないと気づきにくい印象です。
今回の調査を通じて感じたのは、
「便利な機能があること」「使いやすいこと」、
「お得な値引きや特典があること」「お得さを実感できること」は、
必ずしも同じではないということです。
アプリの機能やサービスを充実させることに加え、
それらをお客様にどう届け、どう使ってもらうか。
そこにも、アプリの価値を高めるヒントがあるのではないでしょうか。
便利な機能も、使ってもらえなければ意味がない
今回の調査では、日々の買い物を便利にするさまざまな機能が見られました。
しかし、どれだけ便利でも、その存在を知らなければ使ってもらうことはできません。
例えば、「レシピ」のページから材料を「買い物メモ」に追加でる便利な機能があるとします。
でも、TOP画面に「レシピ」や「買い物メモ」のボタンがなく、
隅にある「メニュー」にまとめられていたら、
アプリにどんな機能があるかを積極的に探さないかぎり、
その存在に気づきにくいのではないかと感じました。
一方で、機能を目立つ場所に配置するだけでは、利用につながるとも限りません。
TOP画面のわかりやすい位置に「レシピ」と「買い物メモ」のボタンがあったとしても、
連携していなければ、紙にメモする方が手軽かもしれません。
また、レシピを探すだけなら、さまざまなレシピサイトやアプリがある中で、
あえてスーパーのアプリを利用する理由も薄れてしまいます。
つまり、大切なのは機能を充実させることだけでなく、
お客様がその機能に気づき、
使いたいと思ったときに、
不便を感じることなく利用できること
ではないでしょうか。
さらに、アプリ内だけでなく、店頭POPやキャンペーンなどをつうじて、
便利な機能を知ってもらうきっかけをつくることも考えられます。
新しい機能を増やす前に、今ある機能をもっと知ってもらい、
使ってもらうにはどうすればよいか。
そこにも、アプリをさらに活かすための可能性があると感じました。
お得な企画も、お得さが伝わらなければもったいない
もうひとつ気になったのが「お得さの伝わり方」です。
どれだけ魅力的な特典を用意していても、お客様がその存在に気づかなかったり、
お得になったことを実感できなかったりすれば、
せっかくの企画も十分に活されません。
例えば、クーポンが自動適用される仕組みは、
使い忘れを防ぎ、選択の手間も減らしてくれます。
一方で、値引きされたことに気づかなければ、便利に買い物ができても、
「このアプリを使っていてよかった」という印象は残りにくいのではないでしょうか。
そこで大切になるのが、お得な企画を考えるだけでなく、
その魅力をどう伝え、どう実感してもらうかという視点です。
例えば、
クーポン対象商品であることを店頭POPで分かりやすく伝えたり、
アプリを開いた際に、その月のクーポン利用履歴や値引き額を
ポップアップで表示したりすることで
お客様にお得さを実感してもらう工夫も考えられます。
こうした工夫は、新しい機能を追加しなくても、今ある仕組みを活かして取り組めることがあるかもしれません。
「どんな特典なら喜んでもらえるか」だけでなく、
「どうすればその魅力が伝わるか」。
企画の内容と、その届け方を一緒に考えることが、
アプリを活用した販促をより魅力的なものにするのではないでしょうか。

アプリと販促の概念に捉われない
こうして考えてみると
便利な機能を使ってもらうことも、お得な企画の魅力を実感してもらうことも、
アプリだけで完結する話ではないように感じます。
アプリの使い勝手と販促の内容は、互いに影響し合っているのではないでしょうか。
例えば、「買い物メモ」は、アプリ開発の視点では、買い忘れを防ぐための便利な機能です。
しかし、販促の視点から「お客様に普段立ち寄らない売場にも足を運んでもらいたい」と考えると
違った活用方法が見えてきます。
買い物メモに登録した商品に合わせて関連商品を紹介したり、
対象商品がある売場を巡るとスタンプが集まる仕掛けをつくったり。
単なる買い物メモが、いつもの買い物に新しい発見を生む販促企画へと広がります。
もちろん、実現にはアプリの機能や店舗での運用など、検討すべきこともあります。
だからこそ、企画が固まってから機能に当てはめるのではなく、
「お客様にどんな便利さやお得さを届けたいか」を
企画の段階から様々な視点に立って考えることが大切なのではないでしょうか。
アプリ開発の視点から新しい販促のアイデアが生まれることもあれば、
販促の視点から、機能や操作方法を見直すヒントが見つかることもあります。
それぞれの視点を掛け合わせることで、企画も機能も、もっと活かせるはずです。
アプリの価値を高めるヒントは、まだまだ隠れている
今回、4社のスーパーアプリを比較してみて感じたのは、
機能やお得な企画の多さだけでは、アプリの魅力は決まらないということです。
すでにある機能も、使い方や販促との組み合わせ次第で、
まだまだ新しい可能性があるのではないかと感じました。
もちろん、どんな企画ができるかは、アプリの機能や店舗の環境、
お客様の買い物の仕方によっても異なります。
だからこそ、
それぞれのスーパーに合った活用方法を
考えていくことが大切なのだと思います。
「この機能を、もっと違う形で活かせないだろうか?」
そんな問いから、これまで気づかなかった可能性が見えてくるかもしれません。
今回の調査が、販促とアプリの可能性を考えるきっかけになれば幸いです。
BRINGでは、これからも「とことん調査隊」として、
小売業界のさまざまなテーマを調査し、販促に携わる私たちならではの視点で、
気づいたことや新たな可能性をお届けしていきます。
「こんなことを調べてほしい」「他社ではどうしているのか気になる」など、
調査してほしいテーマがありましたら、コチラからお気軽にお寄せください。
■冨永 茉莉(株式会社BRING 広報担当)
2015年 中途で株式会社BRINGへ入社。
企画営業として「大手流通小売業の52週の売場演出」「店舗活性化」に携わり、
2020年には育児休業からの復職を機に企画をメインに担当。
小売業にとどまらず、「メーカー各社の販売促進」にも活動の幅を広げる。
2023年からは、これまでの営業と企画の経験を活かし、広報業務に従事。
小売業への関心が強く、気になったことはとことん調べずにはいられない探究心の持ち主。
現在は、現場で培った経験と独自の探究心を活かし、小売業を取り巻く課題や
新たな可能性を探りながら、情報発信に取り組む。
多様な角度から考察を重ね、店舗のコンディションをあげる
次の一手につながる情報を発信することを通じて、世の中の悪循環を好循環に変えるべく活動中。
